ラッコなど海の生き物を狩猟して暮らしていた、アリューシャン列島に住むアリュート族。彼らが使っていた小さな皮舟をロシアの毛皮ハンターたちは「バイダルカ」と呼びました。地球上で最も気象条件が悪いといわれ、強風吹き荒れるベーリング海に、ありったけの狩猟道具を積んで漕ぎ挑むアリュートの姿は、カヤックと一体になった新種の生物のようでもあったといわれています。

このバイダルカは、アリュートのカヤックに自ら追求したカヤックデザインとの共通性を色濃く見出したジョージ・ダイソンによって、現代の素材を用いて復元されたもの。伝統的な素材である皮、流木、骨の代わりにファイバーグラスとアルミニウムが使われています。美しさと機能性を併せ持つ、ユニークな逸品として知る人ぞ知る存在。宇宙物理学の巨人フリーマン・ダイソンを父に持つジョージの旅と、父子が織りなす人生の物語は「宇宙船とカヌー」に詳しく書かれています。P3代表の芹沢高志がこの本を翻訳したこともあって、数艇のバイダルカがかつてP3のオフィスにありました。

photo: ChargeLife – A Necessary Expedition

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宇宙船とカヌー